1.人事評価制度の運用方法
評価とは、評価者と職員のコミュニケーションです。
事業所の目標や目的を働く人みんなが把握し、それに向かって行動した経緯や結果を評価します。そのため対話をしながら、定期的に振り返りをする必要があります。
評価のために必要なステップを具体的にご紹介します。
① 事業所の現状を把握・分析する
・事業所の問題点を洗い出す
リーダー層、職員にそれぞれヒアリングすると様々な意見を集められます。
・たくさん出た問題点から、今解決すべき課題を抽出する
・課題を分析する
課題の原因は何か?解決方法は?具体的な行動内容は?を考えます。
まずは経営者や事業所長が考え、その後にリーダー層と共有することで新たなアイデアが生まれることがあるでしょう。
② 事業所の目標を定める
事業所が向かうべき方向性を決めるイメージです。年間、月間、と細かく決めることで、やるべきことが見えてきます。
③ 評価基準を定める
評価基準はできる限り具体的に設定します。そうすることで「人によって捉え方が違う」現象を防ぐことができます。
④ 職員のあるべき姿を考える
・経営層や事業所長がイメージする
一人ひとりではなく、「リーダー層」「中堅層」「若手層」など、層ごとにイメージするといいでしょう。
⑤ 個人目標を定める
事業所の目標に対して、一人ひとりがどのような役割を担ってその目標に向かうのかを決めます。職員はその目標を達成するための行動を具体的に考え、日々実行していく必要があります。更に個人的なスキル向上や、将来に関する項目を追加するのもよいでしょう。
・定量目標
数値化した目標です。介護業界の仕事を数値化するのは難しいので、全ての項目に入れる必要はありません。一方で定量目標は達成度がわかりやすいので、検討してみてもよいでしょう。
・定性目標
数値化できない目標です。「どうありたいか」を言葉にします。世間一般的に、定性評価は個人判断であると言われます。しかし介護業界には数値化できない成果が多くあり、定性目標の割合が多いのが現状です。そのため「どのような状態になったら目標達成とするか」を評価者と職員でよくすり合わせましょう。
⑥ 定期的に進捗確認をする
日々の業務に追われていると定めた目標は忘れがちです。定期的に労働者と振り返りの時間を持ちましょう。どこまでできているのか、実行できていない原因、実行するためにはどうすればよいのかを話し合えると、次の行動をしやすくなります。
⑦ 振り返り、評価する
定めた目標がどの程度達成できたかを確認します。結果も大切ですが、それまでの過程を職員にヒアリングすることでお互いに行動してきたことを把握することができます。
評価者は複数名設定することがオススメです。例えば第一評価はリーダー、第二評価は事業所長などです。属人化による評価の偏りを防ぎます。
⑧ 評価とその評価に至った理由を職員に伝える
評価方法は、相対評価を取り入れる事業所が多いと思います。職員が「自分はこんなに頑張ったのに…」と評価に疑問を感じてしまわないように、評価理由を伝えることが大切です。全ての職員が納得する評価は難しいですが、コミュニケーションを取ることでトラブルを回避できます。
2.人事評価制度を運用してみて
人事評価制度を運用している事業所の声をまとめました。
「今までなんとなく運用していた人事評価制度を新しく設計しました。これまでは評価者が一人だったこともあり、職員から”好き嫌いで評価されているのではないか”と思われてしまうことがありました。しかし明確な評価基準を設定したことで、職員にとって納得感のある評価となりました
また評価者にとっても明確な評価基準があることで”評価がしやすい”との声があがりました。」
「シフト勤務のため職員の仕事ぶりを常に見ることはできません。面談時に職員は伝えたいことをまとめておき、評価者とのすり合わせをしています。面談時間を有効活用できるようにお互いに試行錯誤しています。」
「自発的に仕事をする職員が増えました。目標確認の時間を定期的に設けているので、進捗状況がよくないと”じゃあ次は何をする?”と考える癖がついているようです。」
「面談時間の確保に苦労しています。初めは6ヶ月に1回の実施でしたが、それでは足りないと感じたため、今は2ヶ月に1回は実施できるように調整しています。」
「これまでの人事評価制度では、”できないことを指摘される”ため、職員にとって気が重い場であったと思います。そのためまずは”目標達成のためにどうすればよいかを考え、生産性高く楽しい職場にする”ことが人事評価制度の目的だと理解してもらうことにしました。」
3.まとめ
どのように人事評価制度を取り入れればよいのかわからない、現制度が正しく運用されていない…という声が多くあがりました。
制度を取り入れる、新しくした際には、まず全職員の意識統一が大切です。「なぜこの制度を使うのか」「この制度を使ってどうありたいのか」を共有します。ただ一方的に伝えるのではなく、職員からの質問を受け付けるなど、対話する機会を設けるとお互いの理解が進みます。
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